血管新生が問題となる疾患にHCPSは有効であると考えられます。
- 悪性腫瘍⇒血管新生による腫瘍細胞の浸潤、成長、転移
- ガン細胞から、血管新生因子が放出され、栄養血管が新生。
- 新生された血管を通じて養分・酸素が供給され、腫瘍は成長。
- 新生血管がやがて転移・浸潤のルートとなる。
- 眼疾患⇒過剰な血管新生による網膜の障害と失明
- 中心窩下脈絡膜新生血管(CNV: choroidal neovascularization)を伴う浸潤型加齢
- IIII黄斑変性(age-related Macular Degeneration: wet-AMD)
- 糖尿病性黄斑浮腫(Diabetic Macular Edema: DME)
- 網膜中心静脈閉塞症(Central retinal vein occlusion: CRVO)
血管新生を阻害する治療薬の開発戦略
- 腫瘍組織の血管新生を刺激する因子の作用をブロック
- VEGF/VEGFR(血管新生因子)に結合するモノクローナル抗体
- VEGFレセプターからの増殖シグナルを遮断する阻害剤
- 新生血管から付近の組織へがん細胞が浸潤する経路のブロック
- 腫瘍の成長や転移を促進するMMP (Matrix metalloproteinase) の阻害剤
- 薬剤としての第一選択肢
- VEGF (VEGF-A) と結合する抗体・アプタマーによって、VEGFによる増殖シグナルを
- IIIIブロックし血管新生を阻害
単純な血管新生阻害の欠点
- 栄養血管を攻撃して腫瘍を飢餓状態にすると、安定だった腫瘍が侵襲的になって転移が活発IIIIになることが報告された。
- Cancer Cell. 2009; 15(3): 220–231. Antiangiogenic therapy elicits malignant progression of tumors to increased local invasion and distant metastasis.
単純な血管新生阻害のみではなく転移を抑制する機能も必要
ヘパリンは多くの生体分子と結合するので転移にも抵抗性である
(1) | ヘパリン結合性増殖因子(増殖因子・サイトカイン・ケモカイン等) |
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VEGF(血管内皮細胞増殖因子)を筆頭に、FGF-1、HGF、KGF、PDGF、HB-EGF、TGFなどの増殖因子、栄養因子類、ミッドカイン、インターフェロン、インターロイキン、TNF-alfa、ケモカイン類 |
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ヘパリンはVEGF以外の増殖因子もブロックし |
(2) | 細胞外マトリックス分子 |
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フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン(I, II, V)、テネイシン、トロンボスポンジン |
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ヘパリンはマトリックス分子と結合して癌細胞が浸潤・転移するのをブロック |
(3) | 細胞接着分子 |
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L-セレクチン、P-セレクチン、NCAM、PE-CAM |
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ヘパリンは、癌細胞の接着分子をブロックして転移を抑制 |
- その他、ヘパリンはその他、 リポタンパク質、酵素類、ウイルス、プリオン由来タンパク質、アネキシンII, V、アビジンなどと結合します。
ヘパリンの特性は血管成長阻害薬の戦略に適合します。
そのヘパリンの特性を強化したのがHCPSです。
- 細胞浸潤抑制効果
- HCPSは、癌細胞が生体のプロテオグリカン組織を突破して転移していくことを妨げる。
- 上のグラフは、HCPSが、プロテオグリカン組織に対する3LLおよびB16細胞の浸潤を強力に抑制する培養試験の結果を示している。
- さらにHCPSは、プロテオグリカン組織に対する癌細胞の接着を強く抑制する。
- プロテオグリカンは腫瘍細胞が他の組織に転移するためのハードルである。
- HCPSは培養癌細胞がプロテオグリカンに接着して浸潤することを抑制する。
- HCPSは腫瘍細胞に対し強い転移抑制効果を持つと考えられる。
- Br J Cancer. 2002 June 5; 86(11): 1803–1812
マウスの腫瘍モデルでも効果が認められました。
- 腫瘍組織の成長阻害
- マウスの背中(皮下)に腫瘍細胞を投与し腫瘍を形成させてから、8日間HCPSをその主要近傍に投与した。
- 投与群では形成した腫瘍の成長を強く抑制した。
- 下のグラフは腫瘍のサイズを示すが、2種類のモデル腫瘍に対し成長阻害効果があったことを示している。
- 腫瘍細胞の転移抑制
- マウスの尾静脈から腫瘍細胞を投与し、肺への転移を調べた。
- 投与群では、B-16メラノーマの転移が抑制されていることが明らかである。
- 下のグラフは、2種類の腫瘍細胞の転移をHCPSが強く抑制したことを示している。
- Br J Cancer. 2002 June 5; 86(11): 1803–1812